03年5月26日に東北地方で震度6の地震が発生し、宮城県の女川原発が緊急停止しました。

以下に紹介する文章は東井さんという方が書いたものです。

東井さんは、女川原発と地震の分析、そして今回の緊急停止が東海地震の発生時に浜岡原発が緊急停止できるかを検証します。

(1)原発建屋での強振動記録

地震時の感知計と強振動記録計は、別物です。感知計は、各プラントごとに設置されています。

女川では感知計は200ガルに設定されていて、3号機はこの値を超えて自動停止しました。

強震計の方は、各サイトごとに設置されていて、加速度の波形が取れます。いわゆる地震計です。速度の波形は、加速度の波形から作成できます。この2つの波形の最大値が、それぞれ最大加速度、最大速度です。

(2)東電交渉で、福島の記録をききました。(5/30)

第一原発サイトは6号の、第二原発サイトは1号の、原子炉建屋地下に強震計は設置されています。三陸南地震の波形はなかなか興味深いものでした。最大加速度は、それぞれ以下の通り。左側が、第一原発サイトでの記録です。


南北方向  115ガル   55ガル    

東西方向   55ガル   42ガル

上下方向   41ガル   37ガル

女川原発サイトの記録は、最大225ガルだったということですが、この強震計はたぶん1号原子炉建屋地下にあると思います。


(3)女川で記録更新

今回、一挙に2倍に記録更新した上、約100キロも離れた福島第1でこれに匹敵する数値を得たわけです。上下動の大きさも、想像したとおりでした。

第2原発では、水平方向の2分の一を越えましたね。ちなみに、第1の方が震源に近いです。波形で見ると、一本だけ飛びぬけて大きな振れが見られます。

これが、地表で格別大きな、1000ガルを越える加速度記録値となったものと思われます。横波の最初の一撃です。直下から、ドンとやられたのですから、怖いです。女川3号以外全部止まっていてほんとに良かったですね。


(4)耐震設計の想定は甘いことが実証されました

女川1号は設計用最強地震として250ガル、設計用限界地震として375ガルを想定して建設されています。前者が実際に起こりうる最大の地震なので、宮城県沖地震の際の揺れとして想定して居た最大加速度が250ガルということでしょう。

地下71キロというかなり深い震源で起きたマグニチュード7.0という、まあ地震としては中規模程度の地震で225ガルと、250ガルに肉迫してしまったのですから、そう遠からず起こると想定されている大地震―宮城県沖地震の際には、いったいどれほどの揺れになるのでしょう。

この大地震は、想定東海地震のように、プレート境界が震源になるので、今回よりもっと浅くなるでしょうから大変です。

およそ30年周期のこの宮城県沖地震は、たまたま女川原発ができる直前の1978年に起きていて、ラッキーにもその来襲を免れてきたに過ぎないのです。

運転開始が1984年ですから、30年以上運転しようと思ったら、保証できませんよ、という話です。その時は、福島原発もどうなりますやら。このまま止めておきましょう。


単純に最大加速度や最大速度で議論するのはあまりうまくないですが、原発推進側は、いわゆる原発の土台で、今回のような大きな数値が、そう簡単に出るとは思っていなかったと思います。

女川原発で、225ガルという記録に、それなりショックをうけているはずですが、、、、、。


(5)想定東海地震はいったいどれだけに?

マグニチュード8.0、すなわちエネルギーで今回の三陸南地震の約30倍、しかも震源は3〜4分の一ほど近づく、それが東海地震の想定ですから、じっさいはどれほどの揺れになるのでしょう。

いずれにしても、これまでの人間や生き物たちが体験したことのないような構築物の振動を、人類は作り出そうとしている。その入れ物の中身の行方を含めて、その結果が、私は恐怖です。まったく。


 今ならまだ間に合うのですよね。       (2003・5・31 東井 怜)