HOME

【朝日新聞】2002年1月19日朝刊 掲載
浜岡原発 地震想定し運転休止せよ
水野誠一(前参議院議員、元西武百貨店社長)

静岡県の浜岡原発で、昨年(2001年)11月、緊急炉心冷却システム(ECCS)の配管破断事故が起きた。その後、別の原因で、放射能を帯びた冷却水が漏れていたことも判明した。外部への放射能漏れはなかったものの、極めて深刻な事故だったと言える。(01年1月の配管破断事故については画面下にリンク集あり)

私は作夏(2000年)の静岡県知事選に出馬し、現職知事と戦って敗退した。最大の争点は静岡空港建設の是非だったが、個人的に一番関心が高い問題は「東海地震が起きたとき、浜岡原発は果たして安全か」という一点だった。

私が参議院議員だった間にも、中部電力の職員や、経済産業省の担当者に、何度かこの問題をただしたことがある。しかし、決まって返ってくるのは「設計上震度7でも耐えられる」「たとえ通常の冷却装置が地震によってダウンしても、ECCSが機能するから心配ない」といった紋切り型の答えばかりだった。

仮に震度6を感知し、自動的に制御棒が炉心に入っても、炉内の崩壊熱が安全域まで下がるのに約3カ月かかると言われる。その間に冷却装置が破壊されてしまったら、原子炉のメルトダウン(溶解)が起きる危険性が高い。

その安全確保のための切り札だったECCSにつながる系統が破断してしまい、ECCS本体の大きな故障が起こりうる心配が高まった。炉心の重大な損傷により、放射能が周辺に漏れ出れば、静岡県内だけの被害では済まない事態になるだろう。

そこで提案したい。今回の事故を天からの警告と考えて、老朽化した1号機、2号機を思い切って廃炉とし、そして3号機と4号機についても、東海地震が起こるまで運転休止すべきだと考える。

現在の電力供給から見ても、一部を他の電力事業者から買電すれば、十分に対応できるはずだ。もし、民間企業である中部電力に大きな不利益が生ずるならば、それこそ防災や危機管理の名目で、国や県が補償すればよい。この柔軟な対応こそ、原子力行政が再び国民の信頼を取り戻すことにもつながると信じている。

空港建設など無駄な公共事業に血税を注ぎ込む罪も大きいが、やらねばならない「国民・県民の生命と財産を守る」という義務を放棄する罪は、もっと大きいということを、肝にめいじなければなるまい。

■配管破断とは、どんな事故だったのか?
・環境と原子力の話 浜岡原発事故の警鐘
・美浜の会 浜岡1号炉で起こった、前代未聞の水素爆発事故
・電気新聞 中部電力浜岡1号 ―相次ぐトラブル
・中部電力 浜岡原子力発電所1号機余熱除去系配管破断事故に関する 調査状況について
Google検索配管破断 浜岡