原発の設備は電気製品の塊です。
つまり、電気消費地として、浜岡町で最大のものは何かというと、浜岡原発です。電力を大量に使うんですね。その大量に使う電気の1番大量の消費場所はポンプです。電動ポンプがたくさん入っています。電動ポンプで水を回して強制循環をするから、原子炉の冷却が保たれています。
浜岡で地震が起きた場合、外から来る送電線が全部問題なく立っていると想定する方がむちゃです。したがって、浜岡原発に入ってきている送電線は全部遮断されるだろうと考えるのが常識です。
もちろん原発もそれを前提としています。つまり外部電源は遮断している。そうすると、冷却のための電源は全部原発で賄わねばなりません。(編者注:原子炉が停止すると発電も止まります。)
そのために非常用ディーゼル発電機というものを各原子炉3機ずつ持っているはずです。これが1台でも起動すれば最低必要な電力量は維持できることになっています。
非常用ディーゼル発電機システム耐震実証試験状況
中部電力HPより |
その非常用ディーゼルですけれども、これもまた各所で問題を起こしています。地震がなくても壊れてるんですね。中部電力浜岡でも、3号機で発電機電源室が火災を起こしたことがあるんですね。
そんなディーゼル発電機にすべての命綱を託さなければいけないのは原発の宿命なわけです。縦揺れ1000ガル、重力加速度も超えるような揺れがディーゼル発電機を襲った時にディーゼルが起動するかどうか。
●非常用ディーゼルの起動実験は横揺れ600ガル、縦揺れ300ガルでしかない
香川県の多度津という所で電力中央研究所が非常用ディーゼル発電機の起動実験というのをやっています。「どんな地震の揺れが起きてもちゃんと起動します」と言っていますが、そこで、例えば、例えば縦揺れ1000ガルを想定するような設備はありません。
最大でも横揺れで600ガル、縦揺れで300ガルしか模擬できる施設ではありませんから、これ浜岡ですね。つまり、そこで起動するってことは、浜岡の設置基準以上の振動が起きないという前提で初めて意味を持つ言葉なわけです。縦揺れ1000ガルの環境下で非常用ディーゼルが起動すると思う方が楽天的過ぎます。
なぜならば、縦揺れのときは自分の重さよりも大きな力が本体にかかるわけですね。また逆に重力が0になるわけですから、自分の重さで上に引っ張られるわけですね。そうすると、地面に留めてあるボルトが耐えられない。そのボルトは繰り返し、数十回にわたる強い引っ張りの振動を受けます。ボルトが引きちぎられるだろうと。
●地震時にディーゼル発電機の起動は難しい
つまり、ディーゼル発電機がディーゼル発電機室の中で飛び上がるわけです。こんな状態を考えるならば、起動するわけがないです。さらに、巨大なタンクが非常用ディーゼル発電機室の外に置いてありますけれども、そのタンク自体、燃料入ってますね。
タンクもそういう振動で揺さぶられる。当然そこから伸びている配管も揺さぶられる。それらが破損しないと考える方があまりに楽天的過ぎる。
当然非常ディーゼルは燃料がなければ動きませんので、起動すること自体が極めて難しいだろうというふうに思わざるをえません。起動しなければ、ECCS(緊急冷却装置)も働きませんし、使用済み燃料プールのポンプも動きません。
つまり、非常用ディーゼルがいかなる地震の時でも、まちがいなく動くということ。それから、もう1つ付け加えておくならば、そこから伸びている配線が全部完全な形で残ること。
1本でも切れれば、その切れた先に電気が行きません。配線が二重になっているところもありますから、1本残らずというのは言い過ぎかもしれませんが、少なくとも主要な計器に行っている配線に全く問題がないということがありえるか。
浜岡では過去に全停電事故、すべての電源が落ちるという事故が起きたことがあります。これもたった1個のリレーが破損しただけです。だから、そういうコア、キーとなるような部品が1つ壊れただけで、電源は全部落ちてしまうというくらい脆弱なものです。
それは、ある種当たり前ですが、そういう巨大地震に襲われている時の電源設備が100%期待通り稼動するというふうに考えること自体荒唐無稽なおとぎ話にしか聞こえないというのが実態です。
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